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年金2000万円問題と障害年金について

2000万円問題の謎

今年世間を騒がせた2000万円問題ですが、これは、金融庁が発表した報告書で、老後に年金以外で夫婦で2000万円が不足する、ということが書かれており、それに対して野党とかマスコミとかがワーワー騒ぎ出して、デモとかする人たちも現れ、大騒ぎになった問題、だと私の中では認識しています。

ちょっと乗り遅れた感が否めませんが、私も社労士としてこの問題の感想を言いますと、
「野党とかマスコミとかデモしてる一部の人とかは何で騒いでるの?年金だけで一生遊んで暮らせると思ってたの?ウソやろ…」
と驚愕しながら事態を見守っていました。

だって、今までうちで何百件と年金申請の依頼を遂行してきましたが、
「ワーイ!年金受給できるようになったから今後は一生遊んで暮らせるぞー!」
みたいな反応をしていた依頼者さんはこれまで一人たりともいませんでしたしね、当たり前ですけど。皆さんそれはそれとして、さてどうしようかという至って賢明な方ばかりです。

社労士の実感として年金額というのは、厚生年金の方の場合だと報酬比例部分があるので、貰っている給与賞与の実績に応じて年金額が決まるのですが、今までものすごい額の給与賞与をもらっていたという方でも300万円程度かなぁという感じで、100万円代とかも普通だという感覚ですし、200万円代だとそれでもなかなか多いかなという感覚です。いずれにしても、遊んで暮らせる金額には程遠いんじゃないでしょうか?

さらに、国民年金オンリーの方の場合だと、40年間1ヶ月も欠かさず掛け続けてやっと65歳からの老齢基礎年金が80万円弱です。未納や免除があればここからさらに目減りします。

こういう現状認識がなかった人がワーワー騒いでるんかなぁという不思議な感覚が私にはあります。

ちなみに基礎年金の月6万5千円で生活ができるのかというと、私の認識としては持ち家ならばギリギリできるという認識です。私自身学生時代は住居費除けばそれくらいで生活していました。それで足りないんならバイトするなり予め何かで自助努力するしかないじゃないか、という感覚であり、デモとかしてた人達は一体国に何を期待していたのだろうかという謎があります。

そういう風に言うと「でも、北欧では~」「スウェーデンガー!」とかっていう人いますけれども、でも北欧の消費税率知ってますか?25%らしいですよ。それが年金の原資となっているわけです。

でも、消費税が8%から10%になったということで大騒ぎしている日本でそんなの現実的なんですか?自由主義国の日本において比較的低税率で足りない部分は自助努力でという話になってくるのは当たり前だと思うし、かつ個人的にはそれが健全な在り方だと思います。

障害年金依頼者に対し当職が心掛けていること

こういう現状ですので、特に障害年金の話でいうと、ご依頼者様で受給できた人に対しても今後どういうプランで生活するのかということの意識づけはしてもらえるように心がけているつもりです。

ちなみに、結局金融庁の報告書が言いたかったというか誘導したかったのは、
「こういう2000万円が不足する状況なので株やら投資信託やらの各種金融商品で備えるのも一つの手ですよ、NISAとかIDECOとかあるしね」
ということなのでしょうけれども、金融市場に金が入ってくるよう誘導したかったという動機もあるにせよ、はっきり年金にまつわる現状認識とその備えを啓発したという意味では至極まっとうではないかと当職などは評価しているのですけれども、これを政府が受け取り拒否したというのもよくわからん対応だなと思います。

しかし、実際うちで依頼を受け、障害年金受給後に
「実際これだけでは生活できないのではないか、皆さんどうされているのか?」
というようなご相談を聞くことも多いのですが、結局は足りないのだとしたら、自分で働くか、自分が働けないのであればお金に働いてもらう(各種投資)という方向性しかないと思いますし、金融庁ではないですが実際そういう回答をしています。

というか、それ以前に本当は公的年金で足りない部分については、予め民間保険とかでリスクヘッジしておくのが望ましいわけですが。

貯金は有効か?

まぁでもホントは社労士が口出しすべき範囲ではないのかもしれませんが、特に障害年金の依頼者さんで認定日請求により過去の年金含めて大きな金額が入った人とかはそれを有効に使っていただきたいと思っています。

個人的な意見ですけれども、その場合貯金は有効ではないと思います。

例えばですが、30歳の人が障害で働けなくなっていて仮に年100万円の障害年金を5年分遡及して500万円もらえたとします。

で、今後は月あたり約8万数千円の年金がもらえるわけですが、これでは生活できないと思った場合に、じゃあ遡及の500万円を普通預金に入れたままそれを切り崩して生活していくのかというと、当然普通預金の利息など無いに等しいものですからいずれはそれも尽きるわけですし、尽きるとわかっていながら切り崩すだけの生活は不安でしようがないはずだと思います。

更に、仮に8万数千円でも生活できるとしても、500万円を貯金しているだけではインフレリスクに耐えられませんので、貯金してても価値はいずれ減っていきます。つまり物価が2倍になれば今ある500万円は250万円の価値しかなくなるわけです。この仕組みがわかってない人が多すぎます。

「でも今デフレだしそんなことになるのかよ?」と言われるかもしれませんが、でも今30歳の人とかだったら50年くらい先のことまで想定していないといけないわけですから、来年再来年そうなるかとかそんな短期の事だけで思考停止していてはいけないと思います。卑近な例で言いますと、この前コンビニでビックリマンチョコを買ってビックリしました。私が子供の頃の30年ほど前では30円だったのに今は100円もするのですごく高いと感じました。つまり、仮に30年前の自分が「今手元に30円あるが、これを今使うのは我慢して30年後にビックリマンチョコを買って楽しもう」と思って30円を30年間引き出しとかに置いといたとしても、30円は30円のままですから、今ビックリマンチョコを買おうと思っても買えないわけです、残念!要するに簡単に言うとこういうことです。

不動産は有効か?

個人的な意見では、不動産を買うのは方向性としてはかなり有効だと思います。特に現在賃貸住宅に住んでいる方ならば、今後は家賃の心配はしなくて済むからです(固定資産税とか修繕費とか管理費とかは別として)。


うちで受けたある障害年金の依頼者の事例ですが、その方は単身者で依頼当時60歳過ぎでしたが、40歳過ぎの頃にある進行性の病気を発病。発病後も20年近く自営業で頑張ってきたが、症状は徐々に進行し、もう仕事もできなくなったということでした。

で、依頼を受けて障害基礎年金2級は受給できましたが、しかしこの月6万5千円だけでどうやって生活していくか不安だ、ということをおっしゃっていました。で、お住まいはずっと賃貸であると。

けど、私が思ったのは、せめて発病した当初の20年前に例えば家賃と同額位の返済額になるクラスの物件を20年ローンを組んで買ってたとすれば、今頃は既にローンは完済し終えて今後は少なくとも住むところの心配はしなくてよかったんじゃないのかということ。また、いざとなればそれを売ったりそれを担保に融資を受けることも可能ですからそういう点でもメリットがあるはずだと言えます。

しかし、この方の場合は、もう今更どうしようもないわけですが、早めに手を打っていれば色々生活をよくする方法というのはあり得て、家を買うというのもその一つだと思われます。

また、このように自己使用の話だけではなく、投資用に不動産を買うというのも場合によってはもちろん有効です。

障害年金受給者の場合の現実的な手法

しかし、上述のような金融商品や不動産での運用というのは、内部疾患や肢体障害などで働けないが判断能力はしっかりしている方かあるいはそれをやってくれるご家族がいらっしゃる方向けのお話になってくるのかなと思います。

多く寄せられる類のご相談なのですが、例えば知的障害で20歳からずっと障害基礎年金をもらっている20代30代くらいの方の親御さんから
「自分たちが生きているうちはまだいいが、亡くなった後はどうすればいいのだろうか」
というものがあります。

これも結局は障害基礎年金だけでは不十分だという金銭的な問題ならば今の内からしっかり手当しておくしかないと思います。

ところが、それが例えばアパートなどの収益不動産という形で残すとしても、残された知的障害の子供がそれを適切に運営できるのかという問題はあろうかと思います。

以前うちにあったご相談では、実際親御さんが知的障害の子供のためにアパートを残して亡くなられたケースで、その本人から相談の電話があったのですが、20歳前障害の障害基礎年金を受給しているが、その所得制限の質問でした。「所得とは自分の場合賃料収入からローン返済額を引いたものを指すのでしょうか?」と言われるので「いやいやそれは全然違いますよ」と答えましたが、まったく理解されておらず、確定申告を任せている税理士さんがおられるとのことだったのでその人に聞いたらわかると思いますよということで終話しました。

こういうことに関しても、当然ながら税金や所得に関する知識や理解力もないため、資産だけ残されても右往左往している様子がよくわかりましたし、修繕の事とか入居者募集や日々の管理なども併せて考えると、終話した後もさてあの方は今後大丈夫なんだろうか、というのは老婆心ながら思いました。管理会社に丸投げみたいなこともできるんでしょうけれども、そうなると収益率は下がるでしょうし…。

金融商品の場合も同様で、株という形で親が資産を残したとしても、売るのか保有し続けるのかということを適切なタイミングで判断できないとやはり損になるわけで、十分な判断能力のない子であればそれは不可能だと思われます。

そういう観点からいうと一番お手軽なのは、親御さんに生命保険をかけて、万一の場合には現金で残すという方法かと思います。

ただ、現金で残すと言っても、やはり何十年というスパンで考えるとインフレリスクもありますし、無計画に使い果たしてしまうということもあると思います。後見人をつけてそれを管理してもらうにしても限度があって、例えば先日ある司法書士さんから相談があり、親御さんが先立った知的障害の子供の後見人をされているとのことでしたが、「現金を引き出す際にはコンビニのATMで毎日千円ずつ引き出しており、その都度手数料を取られている。そうではなく、ある程度の金額をまとめて引き出しておかないと手数料ばかり取られてしまうよということを本人に指導しても全く理解できておらずパニックになっている。私もどうしていいのかわからない…」ということでした。

一長一短あって難しい問題だと思いますが、障害年金受給後のことについてもできるだけご依頼者さんにとって有益なお話ができるように心がけております。

2000万円問題が障害年金申請に与える影響

2000万円問題に戻ると、こういう流れになってくると、特に何も考えていない人が
「年金払ってもどうせ意味ないんだったら払わんとこーっと!」
で未納にし続け、そしてそのうち病気になるが未納のため納付要件アウトで障害年金もらえない、というながれです。それでもなんとかならんかというような相談はウンザリするほどあるのですが、健康な時に意図的に未納にしておいたが、そしたらその後発病したというような話はほとんどの場合、うちでもどうしようもないです。

特に今20代30代の人からしたら、単に「年金」というワードを聞けば何十年も先の話だなという気持ちになってしまうというのはわからんではないのですが、それは年金のうちの一つの機能に過ぎず、障害年金の話になってくると何十年先の話とかではなく、まさに今問題となり得るものであります。

2000万円問題の結果、こういう人が増えないことを祈るばかりです。