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国民年金か?厚生年金か?

障害年金申請でよくあるご相談から

例えばよくあるご相談で、ペースメーカーを装着していて(そのこと以外での症状なし)障害基礎年金を申請したところ不支給となった、というようなご相談があります。

この場合、年金の障害等級としては3級相当となるのですが、障害厚生年金であれば受給可能ですが、障害基礎年金は3級では受給できません。ですから、ひととおりお話をお聞きして可能性は探りますけれども、結果お力になれずすみません、ということで相談終了となりがちなパターンであります。

すると、厚生年金の方だけ優遇されているのはおかしいのではないかとおっしゃる方もいらっしゃいます。

ですが、制度がいびつなところはあるのですが基本的にはおかしくはありません。

保険料の違い

平成29年度の国民年金保険料は1ヶ月あたり16,490円です。これだけ見ると高いなぁという感覚にもなりますし、おかしな話ですが、ある年金事務所職員の人も「子供の国民年金保険料をこの前代わりに払ったんだけど高いよねぇ…」とおっしゃっていたこともあります。

国民年金は例えば個人事業主が加入するものですが、しかし逆に言うと年収1億円とかの個人事業主などで、どれだけ収入が高い人でもこの金額は変わらないわけですから、保険料負担という観点から見ると所得の高い人からすればお得ではあります。

これに対して厚生年金保険料は18.3%で、それとその人の報酬に応じて決まるのですが、例えば月給30万円の人だったら毎月54,900円を負担しているわけです。また賞与からもとられます。

冷静に考えてみれば、報酬の内の2割弱を負担させられているというのは相当異常な話ではないかと思いますし、更に健康保険料の負担もあるわけです。

もちろんこの金額を労使で折半するので、個人の負担が和らいでいるように見えますが、しかし会社側が負担している保険料というのもその人の人件費から捻出されるわけです。要するに、そもそも厚生年金という制度自体がなければ手取りとしてもらえていた54,900円なわけですから、実態としては全額その個人が負担していると見ることも不自然ではないものです。

これは給料から天引きされるものですから労働者個人としては納めているという実感が今一つないものである一方で国民年金の方は個人が自発的に支払って「え、16,490円?高いなあ」という実感を伴うものですからなんとなく国民年金の負担と厚生年金の負担にそんなに差があるのかと感じられてしまうので、余計に冒頭のような不公平感を感じる方もいらっしゃいます。

しかし、これだけ負担額に差があるのですから当然あらゆる部分で差が出てくるのは一般論としては当然ですし、障害年金の場合だと一つには3級で受給できるかできないかという面で差があります。

余談

消費増税が幾度となく延期されているわけですけれども、年金などの社会保障費が増大することに対応すべく消費増税の話がそもそも出てきたわけですが、でも増税を取りやめたところのしわ寄せというのはどこかに出るわけで、それがこの厚生年金の天引きシステムです。痛みを感じる改革(消費増税)は政治的に嫌われるので、こうやってホントは痛ーいことをされてるのに痛みを感じないシステムの中でこっそり保険料の引き上げがなされているわけです。

先日総選挙がありましたが、積極的に消費増税しようという政党はまったく存在しませんでした。消費税は社会全体で負担しようという話でありますが、結局サラリーマンだけが知らないうちに犠牲になってしまうシステムとなっています。

まぁ、そういう政治的な話は政治家や官僚に任せるとして、当職の立場としては、厚生年金というのはこれだけ負担をしてきたという証でありますので、障害年金のご相談を受けた際には極力厚生年金での申請ができないかというのは可能性がありそうな件については毎度ギリギリまで検証しています。

それでも残る不公平?

冒頭で、制度がいびつと言いましたが、それは以下のような場合です。

例えば20歳に会社員となり厚生年金に加入したAさんは、30年勤務した50歳時に会社をリストラされて厚生年金資格を喪失。その後無職のうちに心臓に異変を感じてペースメーカーを植え込みという場合。

一方、40歳までずっと年金を未納にしていたBさんは40歳の時に会社員となり厚生年金に加入。その後10年在職した50歳の時に心臓に異変を感じてペースメーカー植え込みという場合。

この場合、Aさんは30年も厚生年金をかけてきているのに、初診日が無職であれば障害厚生年金の申請はできません。ですから、申請しても難しいものがあると思われます。

一方、BさんはAさんと比べても短い10年しか厚生年金をかけていないにもかかわらず、障害厚生年金として申請できますから、恐らく受給の可能性は高いものと思われます。

要するに初診日が厚生年金か否かというところが分かれ目になるので、上記のようないびつなことが起こり得てしまうというわけです。

そもそもの不公平?

あるいは、そもそもの話として、本質的にはある人が自由に加入する年金を選べるという仕組みにはそもそもなっていないところが不公平ではないのか?という疑問を抱く方もいらっしゃると思います。つまり

「僕は会社員だけど国民年金に入りたい」

とか

「私は個人事業主(もしくは専業主婦)だけど厚生年金に入りたい」

という自由な選択はそもそもできないわけであり、その内に冒頭のような不公平を生ずるのは納得できないという意味で。

しかし、これについては当職はこう思います。

思うに、我が国においてはどのような職業に就くかによって加入する年金制度が異なる仕組みになっている以上、どういう職業に就くかを選択する際に年金制度もその人が選択しているという風に見ることができると思うからです。つまり職業を選ぶということは年金制度を選ぶということでもあるわけです。

ですので、結果として負担が軽い方の国民年金を選んだ結果、冒頭のような問題が起きてもそれは自己責任ということになると思います。

なお、厚生年金加入の会社員が国民年金にしようと思えば、やはり会社を辞めるか時短にするとかそれなりの決断がいると思います。

しかし、国民年金から厚生年金になろうというのは比較的簡単だと思います。専業主婦の人が厚生年金を希望するならば就職するのが早いです。バイトの人なら正社員を目指しましょう。

自営業の人ならば冒頭のようなことが起こってしまう問題の解消も含めて、手厚い年金保障を得たいと思うならば、早期に法人成りを検討すべきではないかと思います。ご関心のある方はこういう件でもご相談いただければ承ります。

未納の問題について

厚生年金に未納というものはありません。会社が国に納めていないというような問題が仮にあったとしても、少なくとも従業員側の年金の納付状況が未納扱いとなることはありません。

これに対して、国民年金の場合はあり得ます。当事務所でも未納が多く申請できないと言われたというご相談も多いですし、可能性がないかというのはやはりギリギリまで検討するのですが、ちょっとならまだしもあまりにガバッと未納が多いとこれはいかがなものか、とは正直思います。

「障害があるから未納にせざるを得なかったんだ!」

と言われる方も中にはいらっしゃいますが、障害年金においては初診日後の未納はまったく問題がないので、そうではなく私が言いたいのは初診日前つまり健康だった時の未納がいかがなものかということです。

「金がないから払えなかった」

という声も聞こえますが、金がないなら免除というものもあるので、それは言い訳にはなりません。