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不服申し立てについて

不服申し立て手段

障害年金不服申し立ての流れ
障害年金受給申請を行った際、自分が考えていた等級での受給でなかったり、不支給の判定を受けたりした場合、通知書が届いた日の翌日から3か月以内であれば審査請求の申請が可能です。

申請の仕方によっては自分が想定していた等級にならなかったり、不支給の判定を受けてしまったりする可能性もあります。障害者手帳を持っている場合でも、障害年金の受給判定が出ないこともあります。
通知された結果に不服がある場合は、不服申し立て申請を行うことが可能です。

審査請求

不服申し立てを行う際は、審査請求書と処分通知その他必要書類を添えて、住居地を管轄する厚生局へ提出します。兵庫県在住の方は大阪にある近畿厚生局の社会保険審査官へ行います。

最初の裁定請求で出た結果のどこに不満があるのか【審査請求の趣旨】、その不服とする根拠はどこにあるのか【審査請求の理由】を明確にしなければなりません。
請求内容を見直しどこが悪かったのか考え、新しい証拠となるものを提示したり、想定通りの受給ができるよう内容の見直しをしたりする必要があります。

審査を行う社会保険審査官は、独任制で中立という建前でありますが、厚生労働省の職員です。
審査官のもとに審査請求書類が到着後は、保険者(厚労省あるいは日本年金機構)への処分の意見も求めつつ審査を進め、諾否を決定します。

なお、この審査官の決定に至るまでに、保険者側で処分を変更(不支給処分を取り消して支給するという内容に決定し直す)する場合があります。この場合、審査請求を続けるメリットが無くなりますので、審査請求を取り下げて終了という流れとなります。

再審査請求

審査請求をしたにも関わらず、その決定が変わらなければ、厚生労働省社会保険審査会へ「再審査請求」を行うことができます。こちらは通知を受け取ってから60日以内に、文書または口頭で行う必要があります。

社会保険審査会は5人の委員で構成され、その中で3人づつの部会が4つ構成されています。
また、被保険者や事業所などを代表する立場での参与もそれぞれの事案について意見を述べます。

【公開審理】
再審査請求には「公開審理」というものがあります。公開審理では厚生労働省に直接出向き、自分の主張を述べることができます。

【公開審理の省略】
請求人に有利な決定を出す場合、公開審理を省略することもあります。

再審査請求をしてもなお希望する結果にならず不服がある場合は、裁判所への訴訟という流れになります。

訴訟

審査請求や再審査請求を経てもなお不服が残る場合には裁判所への提訴が可能です。
なお、障害年金を含む社会保険関係事件については、処分後必ず審査請求を経ねばならないというルール(審査請求前置主義)になっていますので、最初の処分が不服だからといってもいきなり訴訟を提起することは出来ません。

また、訴訟提起には審査請求あるいは再審査請求の結果到着後6か月以内に行わなければならないとの期限が設けられています。

管轄の裁判所は、兵庫県在住の方ならば大阪地裁(行政事件訴訟法第12条第4項:原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)か、もしくは東京地裁(被告=厚生労働省の所在地)となります。

裁判ですから、通常はこの手続き代理業務は弁護士でなければ行えません。社労士はこの手続きには単独では関与できませんが、弁護士と共に補佐人として関与することは出来ます。

当事務所開業10年目時点での不服申し立てについて思うところ

審査請求を各ブロックの厚生局で行うようになったのは、社会保険庁が解体された平成22年からです。
当事務所ではおおよそそれ以降今まで審査請求に携わって参りましたが、この間のこの分野におけるトレンドも色々あったものだなと思います。

ざっくり言いますと、
平成28年頃までは、割とまだ社会保険審査官も社会保険審査会もこちらの言い分を汲み取ってくれるような傾向もあったなと思います。棄却された事案でも、納得できるかどうかはともかくとして、「言いたいことはわかる」という内容のものもあったと思います。

平成29年以降の傾向としては、少なくともうちでの肌感覚としては、ほとんどこちらの主張も聞いてもらえずですし、認容がかつてより得られなくなったという実感が正直言ってあります。
また、内容を見ても「そもそも何を言いたいのかもわからない」というようなものが年々多くなっているという印象です。

こういう傾向についてどのように捉えるのか、また当事務所ではどのように取り組んでいるのかについて解説します。

不服申し立ての審査が厳しくなった原因についての分析

しかしながら、全体の傾向としては悪いものではないという認識でおります。

と言いますのは、平成29年から日本年金機構の障害年金センターが開設されてすべての障害年金案件が東京で一括で審査されるようになって以降の傾向に思いますが(詳細はリンク先コラム参照)、最初の裁定請求段階でヘンテコな決定が下される数が圧倒的に少なくなったなという印象があるからです。ですので、不服申し立てを要するようなけったいな決定自体が減ったという実感があります。
現に、社会保険審査会での再審査請求の受理件数もそれまで2,000件以上の受理があったのが、平成29年以降は2,000件以下で推移しています(詳細はリンク先の社会保険審査会のデータ参照)。
これはやはり、日本年金機構の内部でも一か所にまとめて処理することによる効率化などが計られたからではなかろうかと推察します。

そして、恐らく、審査請求が厳しくなっているのはそのことと表裏一体ではないかとうちでは考えています。最初の審査が適正化されたんだから、不服申し立て段階ではそう簡単に認めんぞという傾向に変わったんだと理解しています。

注意点及び当事務所の方針

よって、現在の傾向に至るまでももちろんそうでしたが、やはり最初の裁定請求段階でしっかりと丁寧に取り組む必要性が一層増したという事が言えると思いますし、そうすれば比較的迅速かつ安定的に思うような結論が得られることが増したと思いながら日々業務に取組んでいます。

よく最近でも、最初の請求を起こす前の段階の方から
「審査請求は通りにくいのですか?」
とか
「ダメだったとしても審査請求があるんですよね?」
等とも聞かれますが、最初ダメでもチャンスが何度もあるという風には特に上記で説明した傾向の中では考えない方がいいです。
そのためにも、最初の段階で不安がある方はやはり当事務所へお声がけ頂ければと思います。

訴訟の補佐人として

ヘンテコな決定が少なくなったとはいえ、全くなくなったわけではありません。
また、制度そのものが曖昧な形で運用されてきたもの、理屈に合ってないけれどももう行政側が既定路線として決めているものの問題点を徹底的に争わねばならないものもあります。

しかしながら、上記のように、審査請求も再審査請求も現在は正常に機能しているとはいいがたい状況にあります。
そこで当事務所では、平成27年の社労士法改正により認められるようになった社労士の法廷における補佐人制度を使って訴訟にも積極的に取り組んでいます。
これぞというケースにおいては裁判まで視野に入れつつ、ご相談者様とお話することも出来ます。

審査請求の受任にあたって

特に、最初の裁定請求段階ではご自身であるいは他の社労士に依頼したがダメだったという方が審査請求のご相談に見えられる場合の流れについてご説明します。

まず、そのような場合には、請求の際に提出した書類一式を拝見させていただき、その上で今後の見通しについてお話させていただいております。
(書類のコピーを予め取っておられない場合には年金事務所に言えば写しの一式を送ってくれます)

今後の見通しとしてお伝えするのは、
・審査請求をすすめる方向性のお話
・審査請求ではなく、むしろ最初から仕切り直しでやり直した方がいいという方向性のお話
・審査請求と仕切り直しを並行するという方向性のお話
・いずれも難しいという方向性のお話
です。

なお、ちなみに自分自身の実感として思うのは、開業して10年この業務に専念して取り組んでおりますので、開業から浅い時期には「これはどうなるんだろうなぁ?」と感じていたようなグレーな領域が現在ではほとんど自分の中でなくなっています。
つまり、「これをこうしたらこうなるな」、という見通しがかなりはっきり見通せるようになっています。
ですので、お恥ずかしながら、今振り返ると初期の頃には今思うとかなり可能性が低いと思われる件で依頼者さんを無駄に引っ張りまわしてしまったなあ、と思うようなこともありましたが、今ではほとんどそういうことはありません。
逆に言うと現在は相談者さんのためにも無理なものは無理とはっきりお伝えするようにしています。

訴訟について

訴訟と審査請求のメリットデメリット
一般的に、行政法の教科書的な説明としては、行政の処分に不服がある場合に取りうる手段として審査請求と訴訟のメリットデメリットは上図のような説明が行われることが多いです。

では、障害年金の場合は実際どうなのかという点を、依頼者さん目線で解説していきたいと思います。

審査請求のメリットデメリット

上図の一般的なメリットデメリットに則して言いますと、
・迅速性という観点からのメリットは、正直言って障害年金の審査請求の場合は成り立っていないと思います。
特に訴訟と比較して迅速だと言うならば、せいぜい2~3か月程度で結論が出るようなことでなければ迅速性があるとは言えないと思います。
で、現実どうなのかというと、今は大体審査請求で5か月程度、再審査請求で10か月程度要していることが多いかなと思います。ですので、この観点で意味があるとは言い難いと思います。

・簡易性という観点からのメリットとしては、確かに訴訟とは違ってガチガチの形式に則っていないと話が進まないということはないですし、訴訟には印紙の貼付が必要ですが、審査請求の場合それも必要ありません。
また、結果が出るまで何度もどこかへ出向いてというような手間は無いのは事実です。しかし、それは逆に言うと、上記のように5か月とか10か月とかの期間の間、話がどういう展開になっているのかもさっぱりわからないままただただ待つしかないというということをも意味します。つまり、話が一方通行で不透明になりがちというところはあると思います。

・デメリットの、行政有利の結果となりがち、という点は、障害年金の審査請求の場合は一層顕著だろうと思っています。だって、特に審査官はとどのつまり厚労省の職員ですし、ぶっちゃけた話私でも自分が審査官というサラリーマンだったとしたらフェアなジャッジは職場内の同調圧力とかもあるでしょうから絶対できないだろうなと思います。

訴訟のメリットデメリット

同じく上図に則して言いますと、
・公平性の観点では、個人的には、審査請求よりかははるかに公平性はあるけれども、裁判官の当たりはずれもあって、外れの場合はやはりちょっと国側のスタンスになってしまうなという感想です。
イメージとしては、ノーミスで話を進められれば訴訟ではチャンスはあるという印象です。

・口頭弁論主義というのは、訴訟において何度も双方で応酬を交わして、主張を展開してゆくという点が、ただ単に出した後は待ち続けるしかない審査請求と比較した場合のメリットだと思います。

・社会的影響力というのは、やはり裁判ですから、新聞やテレビで大々的に取り上げられ、それによって全体のルールにも影響が及んでいくという点はやはり魅力だと思います。最近では、いわゆるⅠ型糖尿病の障害基礎年金不支給訴訟により、不支給の場合の理由の明示が行われるようになったことなどが挙げられます。
また、個人的な体験談としましても、ある訴訟での口頭弁論が終わった後、一緒にやってる弁護士さんの知り合いの某全国紙の新聞記者さんがこの訴訟に注目してますということで来られていました、というようなこともありました。

・デメリットの方はまずは、時間的なコストの話ですが、大体第一審の判決が出るまでには1~1年半程度というイメージです。長いと言えば長いかもしれませんが、しかし、審査請求をするのと比較しても大差はないか、下手をすると訴訟の方が早かったという場合もあります。
また、何度も裁判所に本人が出向かないといけないのかというとそうではなく、弁護士に依頼すれば代理で出頭します。

・デメリットで一番障壁となるのは、経済的コストの点かなと思います。特に弁護士費用。
加えていうならば、それ以前に行政訴訟というか、その中でも更にニッチな障害年金という分野に精通している弁護士さんがそもそも少ないというのもあってやってくれる人を見つけるのも難しい状況があるだろうと思います。
一応当事務所では前向きに取り組んでくれてある程度費用面での相談もできる弁護士さんと一緒に話を進めています。

まとめ

まとめますと、
・審査請求の特徴:内容はともかくやろうと思えば簡単にできるというところがメリットではあるが、結果までは時間もかかるし、納得感も公平感もないし、現状認められている案件はごく少数。

・訴訟の特徴:公平性は比較的担保されているし、やっている充実感はあるのですが、費用面がネック。

というところかと思います。
当事務所では、まず詳しく依頼者さんのお話やニーズをお聞きした上で、現実的で無理のない方法をご提案しております。