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初診日・特殊事例

障害厚生年金と第三者証明(人工透析)

医療記録がない中での、初診日の証明の仕方について事例をご紹介します。

事例 男性・60歳(申請時点)
申請:平成29年
結果:障害厚生年金2級(事後重症)

昭和62年に会社の健診で高血糖を指摘され、その後医療機関を受診したところ2型糖尿病と診断される。定期的に受診をしていたが、仕事の関係で数年ごとに全国を転々とし、その都度転院を繰り返すこととなる。月日は流れ、糖尿病の症状が悪化し、腎不全を合併。平成29年より人工透析となる。

当事務所による解決

予めご依頼者さんのほうである程度動かれたそうなのですが、初診時の医療機関にはカルテがなく、30年も前のことであり、困惑されておられましたところ、当事務所へご依頼となりました。

糖尿病の方の場合、症状の進行は緩やかな場合が多いので、このように何十年も経ってから重篤化して、その結果障害年金を申請しようという場合には医証がないというようなケースはあります。
ただ、それでも一般的には何らかの痕跡がどこかに残っている場合が多いのですけれども、この方の場合、転勤の関係でどこかに長期間継続して通院という履歴が少なかったというのもあり、なかなか昔の情報が入手できませんでした。

そして、まさにこういうケースを救済すべく平成27年に「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」という通知がなされました。特筆すべき点はいくつもあるのですが、本件の場合で言いますと、従来の通知では保険者としては20歳前障害の場合にしか第三者の証明による初診日認定をおこなっていなかったところ、それ以外の場合つまり障害厚生年金や20歳を過ぎた後の通常の障害基礎年金にもその範囲を広げています。

そしてそれに沿う形で、同僚の方2名からの第三者証明をいただき、申請を行ったところ、無事に初診日の認定がなされ、2級の障害厚生年金が受給できることとなりました。

第三者申立のクオリティ

  • ポイントとしましては、まず第三者証明のできる範囲が広がったとはいえ、その証明のクオリティの問題はやはり厳しくみられる場合が多いのではないかと私は思います。
    20歳前障害の場合ですと、ともかく初診日が20歳より前であるということさえわかれば十分でありますので、「○○さんは中学生のころにはこういう症状があったよ」というようなかなり幅のあるような証言でも何にせよ20歳前障害であるということは証明できるため、第三者証明という緩やかな証明方法でも認められやすいものと思われます。要するに初診が中学生の時であろうが、小学生の頃であろうが障害基礎年金の対象であることに変わりはありませんし、またそれの違いにより年金額が変わることもないからです。

    しかしこれに対して、障害厚生年金の場合だと、第三者証明といっても精度の高いものは求められるだろうと思われます。つまり、証明をする友人知人が正確に年月日を言えることまでは不要だとしても、できるだけその幅は狭めで、かつなぜその時期が初診だったといえるのか、とりわけなぜ厚生年金加入中に初診だったと言えるのかという根拠は必要だろうと思います。
    この点で言いますと本件では、同僚の方の証言ですので、在職中つまり厚生年金加入中の出来事だというのはわかりやすいですし、そしていついつ頃に請求者からこういう風に打ち明けられて、丁度そのころこういうことがあったというような詳細かつ根拠のある証言をしてくださっていたのはよかったと思います。

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