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老齢年金繰上げ後の認定日請求

老齢年金を繰り上げてしまった後は、事後重症での障害年金申請はできません。その点ご注意ください。

事例 男性・62歳(申請時点)
申請:平成25年
結果:障害共済年金1級(認定日請求)

平成22年に脳出血を発症し、右半身に後遺症が残った。公務員をしていたがその後退職。60歳になった平成23年にご家族の方で、老齢年金の繰り上げ請求を行う。

当事務所による解決

その後、このサイトをご覧になる機会があって、障害年金てどうなんだろう?、と思って、ご家族が当方にご相談されました。

老齢、遺族、障害これらのうち複数の受給権がある場合の選択というのも一般の方には複雑で、どうしたらいいのかわからないこともあると思います。正直言って、すべてが終わった後でも、ご依頼者様はまだよくわかっておられないご様子でしたので、やはり制度自体が非常に難しいものであるのだろうと思います。

ルールとしては、老齢基礎年金の繰り上げをしてしまうと、事後重症による障害年金の申請はできなくなります。
ちょっと状況がよくわからないのは、繰り上げ申請をした時にはすでに発病した後ですので、制度がわかりにくいにしても年金事務所では何もその辺のことは言ってくれなかったんだろうか、というのは思います。

それを聞くと、「年金事務所では、本人の障害のことについても話したが、『障害年金の申請はできます。でもすっごく難しいですよ』と言われた」のでやらずにそのままだったとのことでした。
障害年金が認定されればそちらの方が有利で、そしてご本人は常時車いす使用のような、そんな状況で、障害年金の申請をすすめないばかりか、それを断念させようというような話をして、事実断念させた、というのが本当であれば非常に違法性というか悪質性が高いのではないのかという気がします。
国側は繰り上げにまつわる訴訟を多く抱えていると聞きます。自己責任だ、というのかもしれませんが、自己責任を問うならばその前提として正しい情報が与えられねばなりません。

その点はおかしいと思いつつも、しかし、事後重症での請求はできないにしても、認定日請求ならばできますので、なんとかその方向で、主治医に認定日時点での診断書を依頼しました。往々にしてあることですが、過去の時点での診断書は書きにくいと当初は渋られましたが、なんとかしてもらって、認定は得られました。

年金の繰り上げ請求は慎重に

  • 一般論としましては、老齢年金の繰り上げはその人の財布の状況を見ながら判断してもらうしかないのですが、少なくとも将来的に大きな障害状態につながるような既往症をお持ちの方にはお勧めできないと言えます。
    ましてや本件のような既に障害のある方は繰り上げよりも先に障害年金を検討された方が良いと思います。

    コラムで別に書こうとも検討しているテーマですが、週刊誌では社労士かファイナンシャルプランナーがしょっちゅう繰り上げ請求を進めるような記事を書いています。恐らく週刊誌の購買層に合わせてそういう記事を書いているんでしょうけれども、執筆している人は社労士やFPとは言ってもほとんど障害年金については知らない人ばかりですから、本件のように障害があるのに繰り上げしてしまうケースや、あるいは繰り上げしてから障害になるようなケースは想定していないようなものばかりです。

    曰く、「健康なうちにもらっといたほうがいい」とかいう理由ですが、しかし健康じゃなくなった場合の補償という障害年金の観点からいうと、何言ってんだこいつ、という感想です。
    当事務所は繰り上げは出来るだけしない方がいいというスタンスです。

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