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初診日・特殊事例

審査請求

年金事務所の誤教示(双極性感情障害)

初診日と納付要件に関する色々な関係者の不手際があって上手くいっていなかった申請を丁寧にほぐしていった事案です。

事例 女性・46歳(申請時点)
申請:平成26年
結果:障害厚生年金2級(事後重症)

平成3年に仕事上のストレスにより、A病院精神科を受診。(なお、それより前の昭和61年頃に近医B病院で眠剤を処方されるというようなことはあった模様。)
その後、退職し、軽快と悪化を繰り返すが、平成11年頃から悪化の一途をたどりC病院で入退院を繰り返すようになり双極性感情障害と診断される。
そして、平成26年に昭和61年を初診として障害厚生年金を申請したところ、初診日が確認できないとして却下される。

当事務所による解決

当初は却下処分に対する審査請求のご相談としてご主人がみえられましたが、今にして思うとまずは年金事務所の窓口担当者が話を複雑にしてしまっていたケースだなと思います。

まず、ご依頼者さんの夫が障害年金の相談ということで年金事務所に相談に赴かれて、初診日はA病院で平成3年である、ということまでは伝えたところ、そうだとすると納付要件を満たさないと言われたとのことです。
平成3年より前に何かなかったか思い出してと言われ、頑張って本人にいろんなことを思い出してもらった結果、近医B病院で昭和61年ころに眠れなくて眠剤を処方されたことを思い出して、それならば納付要件を満たすと言われ申請したとのことでした。しかし、B病院は今はもう廃院しているため、受診状況等証明書は入手できないまま申請したため却下となっていました。

そこで、当職の方で、関連書類をすべて検証してみたところ、一見すると、平成3年というだけでは納付要件は満たしていないように見えました。しかし結論としてさらにお話を聞いたり、調べたりすると以下のことについて確証を得ました。
①20歳~22歳の間の約2年強の国民年金期間について記録上は未納とされていて、かなりのボリュームがあるように一見してみえるけれども、実はそのうちの大部分は学生だった期間であるので、合算対象期間(カラ期間)として、未納とはカウントされない期間であること。そうすると平成3年だとすると納付要件を満たさないという年金事務所の説明は間違っているということ。
②A病院は当初カルテがないと説明していたとのことですが、再度申し込むとカルテはあったとのこと。その初診日を基にすると①の事情も関係なく、納付要件は満たしているということ。

結果としては審査請求期間が過ぎた後にそこまでわかったため、当方で正式に受任し、再申請して結果的には何とか認定を得ることができました。

年金事務所の対応の不備

  • 本件で言いますと、一般人の人が自ら、
    「この期間は合算対象期間に該当しているため未納とはカウントされない」
    などと主張することはあり得ませんから、やはり丁寧に話を聞くべきではなかろうかというのはまず思います。

    また、実際本件では合算対象期間も関係なく納付要件は充たしていた事案ですから、納付要件を充たしていないので申請が出来ませんというアナウンスをしていたんだったらやはり軽率だったと思います。

病院の対応の不備

  • 年金事務所の誤教示ももちろんありましたが、それ以外の関係者の対応も非常に問題があって、不幸な結果となってしまっているなと思います。なので、それらについてまとめてこの場で斬ることにします。

    まずはA病院です。あえて、名前は伏せますが、かなり大きな公立病院です。ここは、本件だけでなく、古い受診状況等証明書や診断書を求めるとこう言います。

    A「カルテの保存期間は法律上5年です」
    当職「では、この方のカルテはないということなのですね?」
    A「いや、カルテの保存義務は5年なのです」
    当職「あの、だから、ないから書けないということなのですか?」
    A「保存義務は5年なのです」
    当職「あるのかないのかどっちなんです?法律上の保存義務の話などこちらも知っている。ないならないと言ってもらわないとこちらも年金事務所に報告できないのですが」
    A「保存義務は5年なのですよねぇ」

    というような人を小ばかにしたような対応をして、
    A「はぁ~、だったら一応申し込んでください。あったら書きますので」
    というようなことを言われ、申し込んだらしれっと出してくるというような有様。
    あまりにひどい対応なので、公立病院ですし近々然るべき部署にクレームを入れる予定です。相当大勢の方が通院している病院ですので、これで大きな不利益を被った方も大勢いらっしゃるものと推察されます。

申請を依頼するなら社労士へ

  • 最後に、ソーシャルワーカー(C病院)です。
    最初の申請では、ご家族を手伝う任せてくれ、というようなスタンスだったらしいのですが、まず、A病院で同様の対応をされてどうしたかというと、そこであきらめました。本来であればここは最重要書類がかかっていますので、当職がしたように喰らいつかないといけないところです。それができないならば簡単に任せてくれなどと言わないことです。そして、
    「カルテはないらしい、なので、B病院廃院ですけど、そこを初診として申し立てればいけますって」
    ぐらいの感じで、申請を後押ししたとのことですが、初診日の認定とは受診状況等証明書ありませんけどお願いね~、だけで認められるようなそんなに甘いものではありません。
    ソーシャルワーカーの話は大体「形だけでも申請ができればそれでよし」というスタンスに基づいていることが多いのですが、それで通らなくても知らんぷり。結局本件も却下後、手に負えず当職にお鉢が回ってきたわけですから無責任にもほどがあります。
    また、そもそも法律上も年金の申請にかかる業務は社会保険労務士の独占業務です。そういう事情もある上で、障害年金の申請くらいできるさー、くらいの感覚でソーシャルワーカーがしゃしゃり出てくることも多いのですが、実際本件でも彼らは合算対象期間のことなど知らなかったわけです。
    年金自体のこともよく知らないのに、どういう思い上がりなのかわかりませんが、最近当職は彼らの一部について非常に法律上も問題があると思われる事例にもよくぶち当たりますので、これについても然るべき部署に対策を講じてもらおうと考えているところです。
    無責任かつ中途半端な対応であるためご依頼者さんも非常にお怒りでした。結局は、セミプロであるソーシャルワーカーに任せたために最初はこうなってしまったわけですから、やはりプロである社会保険労務士に最初からお任せいただくべきだろうと思います。

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